うまくなるためにやったこと ― リフティング

 リフティングが好きな人は、あまりやらない人よりも、ボールタッチが繊細だ。

 小学校4年時にサッカーを始めたとき、最初におそわったのがリフティングだった。

 初めはインステップ(足の甲)でリフティングするのが難しく、簡単にできる太ももで始めた。インステップができても、利き足で繰り返すのがやっと。両足で交互にやるには時間がかかった。

 根気よく練習を続けなければ絶対にうまくはならない。それがリフティングだ。

 回数を増やすこともそうだが、インステップだけでなく、足の両サイド、肩、頭など、手と腕以外の体のいろんな部位で挑戦してみる。そんな向上心が上達には必要になる。

 リフティングができなくても、サッカーのプレーはできる。だから夢中になる人と、そこまでやらない人の、どちらかに分かれていく。

 私はというと、リフティングが上手くなりたいと楽しんで続けたタイプだ。

 中学生のころは、カズ(三浦知良)のリフティングに影響された。

 ブラジルから帰国したカズが注目されると、リフティングをする姿もよく映像で流れた。カズのリフティングは妙技のオンパレードだった。

 中でも衝撃を受けたのが、リフティング中にポーンと肩の高さまでボールを上げ、上がったところで右肩の上から、首の裏を通して左肩まで転がし、また足まで落としてリフティングを再開するという技。カッコよくて、とにかく真似したくて、練習を重ねた。

 高校生になると、より高度な技に挑戦した。

 「またぎ技」だ。リフティング好きなら誰もが一度はあこがれる、途中でボールをまたぐ上級レベルの技。サッカー部の後輩と競って練習した思い出がある。ちなみに、リフティングの技を競う「フリースタイルフットボール」競技では「アラウンドザワールド」と呼ばれているらしい。

 また、どこのテレビ局かは忘れたが、あるサッカー番組でJリーガーにテニスボールでリフティングをしてもらうという企画があった。遊びながら挑戦した。

 当時、柏レイソルに所属する元ブラジル代表のカレカが、いとも簡単にテニスボールでリフティングするのを見て、「やっぱりセレソンは違うなー」と衝撃を受けた。一方、浦和レッズの福田正博(元日本代表)は5回も続かなかった。

 2人は同じFWだが、カレカはテクニックのある技巧派。福田はスピード突破タイプ。リフティングの得手不得手はプレースタイルに影響するんだなあと、強く印象づけられた。

 リフティングをすれば、その日のコンディションがだいたい分かる。

 サッカーができない日が続き、久しぶりにボールに触れると、ボールの回転やキックの力加減の微妙なズレが感覚として分かるからだ。きっと筋肉の衰えも影響している。そんなときは50回も続かずにボールを落とす。

 一方、頻度を上げれば年齢に関わらずリフティングは上達できる。そう実感した出来事があった。

 40代前半。コロナ禍でのことだ。

 2020年2月下旬、政府のコロナ感染症対策方針を受けて、日本中のあらゆるスポーツ活動が停止した。サッカーも、プロからアマチュアまですべての試合日程が中止になった。

 サッカーができない悶々とした日々が始まった。

 私は、毎日ではないが、自宅近くの河川敷へよく足を運んだ。体を動かし、汗をかくためだ。当時は休職中で時間もあった。

 そして、一人でリフティングや「壁当て練習」ばかりやっていた。

 普段はサッカー前のアップ時に少しやる程度のリフティングだ。それが頻繁にやるようになった。すると使う筋肉が締まり、日に日に安定感が増す。実感もあった。いつやっても300回、400回ぐらいは容易に続く。

 5カ月が経った7月下旬のある日のことだ。

 いつものようにリフティングを始めると、あっという間に500回を超えた。調子がいい。風がなく、天気もいい。600回、700回とあっさり続いた。

 もしかして、最高記録?

 これまで700回を超えたことはあっただろうか。いや、記憶にない。そもそも最高記録が何回なのかを覚えていないし、大人になってから記録を意識してリフティングをしたことがなかった。

 その後もテンポよく回数を重ね、850回を超えた。

 だが、ここで急に体が硬くなった。

 原因は「欲」。「ここまできたら、1000回を超えたい…」と思ってしまったのだ。

 それまで何も意識もせず、リラックスできていたが、「1000回超えのチャンスを逃したくない…」と強く意識したとたん、緊張して体が硬くなったわけである。

 それでも、なんとか900回に到達。

 あと100回で1000…。そう考えると、ますます平常心が保てない。筋肉疲労もあり、このあたりから何度かボールを落としそうになったが、必死にくらいついた。

 

 947、948、949、950…。

 あと50回。頑張れ、おれ。もう少し。

 

 980、981、982、983…。

 地球のみんな、オラにほんのちょっとずつだけ元気を分けてくれー(@ドラゴンボール)

 

 997、998、999、1000、1001…。

 キタァーーーーーーーーーーーー!!(@織田裕二)

 

 1000回を超えた直後、張りつめた緊張がスーッと解けるのが分かった。

 「もういつ落としてもいいや、1000回を超えたし」という気持ちになったからだろう。

 開放感でリラックスモードになると、リフティングは再び安定感を取り戻した。

 そのままサラッと1100回を超えた。

 このまま1200回もいけるなー。どこまで記録を伸ばせるかなあ?

 なんて考えていたところだった。

 

 1195、1196、1197、1198、あっ!! 

 ボールがすねに当たり、ポトって前に落ちた。

 

 ゲームオーバー。

 

 まさに気の緩み。「自信と過信は紙一重」とはよく言うが…。

 それでも私は、「1198回」という最高記録に満足していた。本田圭佑的に言えば、「きよきよ(清々)しかった」のである。

 ただ、死ぬまでに記録を更新することはもうないだろう、と思った。だって、コロナ禍でリフティングばかりやっていたからこその最高記録。だから安定感が増し、1000回以上もできたわけで。

 あれから4年近くが経つが、やっぱり記録更新はない。500回超えすらない…。

 あのとき千載一遇のチャンスをものにしてよかった。1198回。われながら誇らしい記録である。

by 北 コウタ
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