いつか副審はAIが担う? W杯カタール大会は人工知能がオフサイド判定
11月に開幕するFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会では、複数の専用カメラやAI(人工知能)などを使ってオフサイドをより正確に判定するという。国際サッカー連盟(FIFA)が7月に発表した。
なんでも、スタジアムの屋根に設置する12個の専用カメラがボールや選手の動きを細かく追尾。それだけでなく、大会の公式使用球には、ボールが蹴られた瞬間を検知するセンサーを埋め込むという。
これらの最新技術がオフサイドと判断すると、自動で映像分析をするVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)担当の審判に通知され、最終的に主審に伝えられる仕組みだ。
FIFA審判委員会のピエルルイジ・コッリーナ委員長は、「オフサイドを確認する際のプロセスに時間がかかりすぎていた。半自動化されたオフサイド・テクノロジーを持ち込むことで、より早くて正確な意思決定が可能になる」と話している。
サッカーのレフェリングもついにここまできたか、という印象だ。
現代のサッカーは、毎年のように新しいルールや運営方法が適用されている。その中で、最近は主審、副審の3人の目や判断スピードでは追いつけない部分をテクノロジーで補うことが増えている。
得点が入ったかどうかを判断するゴールラインテクノロジーが導入され、ボールにICチップが埋め込まれたときは、「サッカーボールの中にそんなものを入れる時代になったか」とそこそこの衝撃的だった。海外では「パンドラの箱を開けることになる」という反対の意見もあった。
でも、それもいまでは当たり前となり、最近ではそれ以上に物議を醸したVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)すら浸透しつつある。
陸上競技の走者と並行して移動するカメラを思い出した
ゴールラインテクノロジーの導入でボールにICチップが埋め込まれたとき、いずれはオフサイドの判定にも利用されるんじゃないか?という予想はしていたが、やはりそうなった。
このままさらにテクノロジーの進化が続けば、いずれは副審がいらなくなる時代が来るかもしれない。ふと、陸上競技の100メートル走などで、走者と並行して移動するカメラを思い出した。あのカメラにAIを搭載し、レフェリーフラッグを付ければ…。
ただ、こうしたテクノロジーの進化を導入するサッカー環境は、W杯など一部の一流選手を取り巻くものに限る。
日本で近い将来にJ1リーグが導入したとしても、それ以下のカテゴリーで導入されることは考えにくい。設備の費用だけでも膨大になりそうだ。
そう考えると、ボールひとつあればいつでもどこでもできるというサッカーの普遍的な魅力は、われわれアマチュアレベルにおいてはまったく変わらない。そうした事実に少しホッとする気持ちもある。サッカーはイギリスの労働者階級から生まれた大衆的なスポーツなのだから。
私がいま楽しむシニアサッカーの環境も、ルール改正の変移を除けば小学生のころからやってきたサッカーと変わらない。3人の審判のそれぞれのジャッジに委ねられるもので、ゴールラインテクノロジーやVARとはこれからもずっと無縁だろう。
だから、テクノロジーの進化とともに変化していくハイレベルなサッカーは、一流選手たちがより正確なジャッジの中で究極のプレーを追求するためのもの、そしてその試合を見るサッカーファンをより楽しませるためのものだと、つくづく感じた。
ただ、あまりテクノロジーに依存しすぎると、いつか大きなしっぺ返しがありそうな気がしてならない。
(了)