海外サッカー

女子サッカーのACLが23年創設へ、背景に「広がる欧米との差」

「AFC女子クラブ選手権2019」で優勝した日テレ・ベレーザ
「AFC女子クラブ選手権2019」で優勝した日テレ・ベレーザ。2019年11月(source: the-afc.com

 アジア地域のクラブチームの頂点を決めるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)。その「女子版」となる女子ACL(Women’s AFC Champions League)が2023年に創設される。主催するアジアサッカー連盟(AFC)女子サッカー・トップのバイ・リリ(白莉莉)氏がその計画を明かした。目的は「アジア全体の女子サッカーの底上げ」。しかし、背景には「広がる欧米との差」への危機感があるようだ。仏メディアのインタビューに応じたバイ・リリ氏の発言などをもとにAFCの狙いを探った。

唐突に開催された「AFC女子クラブ選手権2019」

 振り返れば、女子ACL創設に向けた動きは一昨年にあった。

 2019年11月下旬、AFCは「女子クラブ選手権2019 FIFA/AFCパイロット版トーナメント」(11/26~30)と題する試験的な大会を韓国で開催した。国際サッカー連盟(FIFA)との協働という名目だ。

 大会には日本、中国、韓国、オーストラリアの4カ国から各リーグ王者がそれぞれ出場。日本代表の日テレ・ベレーザが4クラブによる総当たり戦を2勝1分けで制し、初代アジア王者に輝いた。

 しかし、この大会の開催を巡っては「唐突感」が否めなかった。
 
 日本サッカー協会(JFA)の公開資料によると、AFCから大会開催の通達を受けたのは同年9月20日。たったの2ヶ月前だ。期間や大会方法が示された上で「2018もしくは2019年シーズンの優勝クラブ、またはそれに準ずるクラブ」を推薦、派遣して欲しいとの要請だった。回答期限は10月4日。JFAは10月10日に予定していた理事会を待たずにAFCへ回答したという。

 派遣クラブの選定は容易ではなかったと察する。

 当時、11月下旬には皇后杯の予選が組まれ、12月中旬には韓国で開催の「EAFF E-1 サッカー選手権」を控えていた。日本代表選手を多く抱える日テレ・ベレーザにとって、過密日程はコンディション調整を困難にする。

 日テレ・ベレーザは皇后杯の予選後すぐに韓国へ移動。韓国では5日間で3試合を戦った。しかし、両大会ともに優勝。すべては「結果オーライ」で収まった。

2019年ワールドカップでのアジア勢の惨敗を受けて

 では、AFCが「女子クラブ選手権2019」の開催を急いだのはなぜか?

 背景にあったのは「欧米との差をこれ以上広げたくない」という危機感だと考えられる。転機となったのは、同年6月から7月にかけて開催されたFIFA女子ワールドカップ・フランス大会だ。

 出場したアジア5カ国のうち、決勝トーナメントに進んだのは日本、オーストラリア、中国の3カ国で、いずれも1回戦で敗退した。女子ワールドカップ史上、アジアの国がベスト8に残れなかったのはこれが初めてだった。さらに言えば、ベスト8に残ったのは米国と欧州7カ国。大陸間のレベルの差を浮き彫りにした。

 アジア勢の惨敗を受け、AFCは何かしらの対策を協議したはずだ。そして3ヶ月と経たないうちに「女子クラブ選手権2019」の開催を決め、4カ国に通達している。

by 北 コウタ
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