カルチャー

時代とともに変わりつつある日韓戦の熱量

日韓戦でぶつかり合う選手たち
魂の肉弾戦、日韓戦の醍醐味はそれにつきる(source: the-afc.com

サッカー界を取り巻く韓国社会の変化が関係? 

 コロナ禍の2021年3月25日、サッカー男子の親善試合として日韓戦が横浜で開催された。両国合意の上で厳重な検疫体制がしかれ、サポーターは声を発せられないルール。異例の試合環境ではあったが、見るものを熱くさせる久しぶりの日韓戦に期待した。しかし、互いの意地とプライドがぶつかりあうその醍醐味は感じられず、その熱量は決して高いものではなかった。試合は3-0。日本の快勝だった。

 いつの時代、どんな状況でも、つねに死闘を繰り広げてきた日本と韓国。それは親善試合だったとしてもだ。しかし、「伝統の一戦」の熱量は時代とともに変わりつつある。そこには韓国のサッカー界を取り巻く社会環境の変化が関係しているのではないか。要因を探った。

 魂の肉弾戦、サッカー日韓対決が好きだ。ワールドカップ予選、アジアカップ、親善試合など対戦が決まると試合当日までワクワクが止まらない。日本が勝てば最高の高揚感を得られる。負ければ抑えようのない悔しさがこみ上げ、内容によっては日本代表への怒りに転化する。

 日韓戦の熱量を高める大きな要因は韓国の勝利への執念だ。背景にあるのは日本に植民地にされたという戦争時代の「負の歴史」だろう。反日教育の影響が「底力」となり、韓国人選手を奮い立たせる。「絶対に負けられない相手」だと教えられ、育ってきているからだ。これが先輩世代から受け継がれてきた「基本姿勢」となっている。

 よって「永遠のライバル」と意識し合う両者だが、どちらかといえば韓国人選手の方に強い意識を感じる。元日本代表の城彰二氏は自身のSNSサイトでこう日韓戦を振り返った。「韓国に対してあまり強い思い入れは実はなかった。歴史を紐解けばいろいろな問題があるかもしれないが、Jリーグでも一緒にプレーしている韓国人選手がいたからね。だけど韓国の選手は相手が日本となると目の色が変わる。激しく戦ってきた。僕らはそれに感化されて『おれたちも負けねえぞ』と熱くなった」

 韓国の執念に日本が呼応することで試合は熱を帯び、白熱した展開になる。

闘争心に影響を及ぼす? 韓国人Jリーガーの増加

 だが近年、韓国人選手の意識に変化が生じているのではないだろうか。

 要因としてまず考えられるのが、韓国人Jリーガーの増加だ。2020年4月時点のJリーグにおける韓国人登録選手は約40人。たったの1人だった1993年の開幕当初に比べると大きく増加している。また、Jリーグでは試合に出場できる外国人枠が2019年に大きく改正された。J1で最大5人、J2、J3は最大4人となった。これも韓国人Jリーガー増加の要因となっている。

 日本のJリーグクラブで日本人選手と同じ目標に向かってプレーした経験は、日本への愛着や友好的感情を少なからず芽生えさせるだろう。それがマイナスに働けば日韓戦に臨むモチベーション、闘争心に影響を及ぼす。伝統の「底力」が出せなくなるからだ。こうした感情の変化は海外で日本人選手とチームメートになった場合にも起こりうる。

by 北 コウタ
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