日本サッカー

東京五輪サッカー男子の日本代表、攻撃陣の選考ポイントは「突出した“武器”」

東京五輪サッカー男子日本代表の4人

 東京オリンピックに出場するサッカー男子の日本代表メンバー18人が決まった。

 「サプライズなし」と言われた今回のメンバー。それだけ最終選考メンバーの実力が拮抗し、誰が選ばれても驚かないほど選手層が厚くなった証拠だろう。いまや複数のポジションをこなせるユーティリティ性のある選手は当たり前のように増えている。

 そんな中、日本サッカー協会(JFA)の選考ポイントを強く感じさせたのが前線のアタッカー陣だ。とにかく「特徴的な“個の力”」がある選手、「突出した“武器”」を持つ選手が選ばれている。

驚異的な前田の「スピード」、群を抜く上田の「動き出し」

 FWの前田大然(横浜Fマリノス所属)はとにかく足が速い。そのスピードは世界でもトップクラスだろう。裏を取られたら、ボールコントロールをミスしたら、相手DFにとっては脅威でしかない。今季はすでに9得点と好調だ(6月28日時点)。守備におけるファースト・ディフェンダーとしての役割も大きく、相手にゆっくりボールを保持する時間を与えない。すぐに追いかけ回す。

 もう一人のFW、上田絢世(鹿島アントラーズ所属)の「個」は精度の高い「オフ・ザ・ボール」(ボールを持たない局面)の動き。90分間、つねにゴールを意識して動き続ける。相手DFが気を抜けば、マークの上田を見失う。FWなら誰もが必要な能力だが、上田の「動き出し」は群を抜いている。そこに決定力もともなう。昨季、所属クラブで10得点だった上田は、今季すでに8得点を挙げてる(6月28日時点)。生粋のストライカーだ。

 MFの堂安律(オランダ・PSV所属)、久保建英(スペイン・ヘタフェ所属)、三笘薫(川崎フロンターレ所属)の3人はすでに所属クラブで存分に「個」の力を証明している。“ゴリゴリ”のドリブラーだ。

 縦への推進力、失敗を恐れずに相手DFに勝負を挑む姿勢、得点感覚。いずれも経験を積むごとに磨きがかかっている。3人が前線で仕掛け、相手選手を抜き去ることで、相手のディフェンスラインに歪みが生じる。そうなると、FW上田の「動き出し」はさらに活きる。

 3人の影に隠れがちだが、相馬勇紀(名古屋グランパス所属)の左サイドの仕掛けにも目をみはるものがある。ドリブラーというより、サイドのスペシャリストという感じだろうか。仕掛けを繰り返すその姿勢は三笘に引けを取らない。先発、途中のどちらで出場しても、自分の役割をよく理解している選手だ。追いかける試合展開では、何度も勝負を繰り返すタフさがある。

 三好康児(ベルギー・ロイヤルアントワープ所属)は右サイドからの突破に「自分の形」を持っている。日本でプレー映像を見る機会は少ないが、屈強な海外DFを相手にしても光るプレーを見せ続けている。左利きで上背はなく、堂安、久保とタイプが重なるところもあるが、正確なキック、シュートへの意識、判断力、アイデア、どれをとっても一級品だ。それゆえ、U-15日本代表に招集されて以来、途切れることなく年代別代表に呼ばれ続けている。U-17W杯(2013年)とU-20W杯(2017年)に出場し、国際大会での経験も豊富だ。

 三好に関しては、森保一監督の期待の高さがうかがえる。北海道コンサドーレ札幌にレンタル移籍中も、札幌ドームまで視察に足を運んでいた。期待の表れか、2019年には南米選手権に参加するA代表に「飛び級」で初招集。ウルグアイ戦でのスタメン起用に応え、右サイドから相手DFに勝負を仕掛け、得点を決めた。この試合、三好は2得点を挙げる活躍で公式のMOMに選ばれている。

「万能型」よりも、求められるのは「特徴ある選手」?

 先日見たBS放送のサッカー番組で、元鹿島アントラーズ監督の大岩剛氏(元日本代表)が興味深い話をしていた。大岩氏は現在、JFAインストラクターとしてU-18日本代表監督を務めている。

 番組で大岩氏は次の質問を受けた。「経験もない、フィジカルも足りない17、18歳の若い年代でも、トップカテゴリーで使ってみてもいいな、と思うのはどんな選手か。どういう部分を見て、判断するのか?」

by 北 コウタ
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