海外サッカー

中国サッカーはいまが「分水嶺」。バブル終焉でJリーグを意識した改革へ

 「年俸制」や「企業名の使用禁止」と聞くと、発足当初のJリーグを思い出す。当時の川淵三郎チェアマンは、大半のオーナー企業が反対する中、「地域の人たちがクラブを応援しないかぎり、そのクラブの発展はない」と強く訴えた。

 それでも企業依存からの脱却には時間がかかった。1999年には親会社の業績不振により、横浜フリューゲルスが横浜マリノスへの合併という形で消滅。一因には選手の人件費の高騰もあったされ、同年、Jリーグはこれを教訓にして、新人選手の年俸制限に関する規約をつくっている。

「サッカー中長期計画」は道半ば。起動修正して再出発を切る

 中国には、国家が掲げる「サッカー中長期発展計画」というものがある。ご存知だろうか。

 計画は2016年4月に発表された。2016年から2020年(短期)、2021年から2030年(中期)、2031年から2050年(長期)と3段階に分けられ、それぞれに中間目標が設定されている。大のサッカー好きで知られる習近平国家主席の肝いりとも言われ、ワールドカップの開催も視野に入れながら2050年までに「サッカー超大国」を目指すという。

 計画に沿えば、今年は第2段階(中期)の最初の1年になる。もしかすると、「年俸制」や「企業名の使用禁止」を唐突に導入しのは、このスタートに合わせたかったのかもしれない。

習近平国家主席と少年サッカーチーム
ドイツ・ベルリンに遠征中の中国のサッカーチームの激励に訪れた習近平国家主席(中央)。2014年(source: xinhuanet.com

 計画発表後の2016年以降、中国各地のサッカー協会やクラブチーム関係者が頻繁に日本視察に訪れている。中国は、日本サッカーの発展における部活動の役割に注目しており、「サッカーに特化した学校を2万校に増やす」としている。最近では、毎年正月に開催される「全国高校サッカー選手権大会」の様子を中国メディアが取材するほどの熱の入れようだ。日本サッカーからヒントを得ようとする貪欲さがうかがえる。

 そう考えると、中国のプロリーグがJリーグにならって規制改革を進めるのもうなずける。サッカーに限らず、経済や金融、社会福祉など、中国はこれまで一足先に高度成長期を歩んだ日本の様々な経験につい考察し、手本にしてきた。

 国営の新華社通信はこうも報じている。「不合理で盲目的な発展を改め、プロリーグはできるだけ早く軌道修正する必要がある。だがその上で痛みは避けられない。いま最も重要なことは、混乱や後悔の念にさいなまれるのではなく、痛みの中から膿を取り除き、リロードして再出発を切ることだ」

 日本と中国は国情や文化、人びとの生活様式が違う。同じことをやってもうまくいくとは限らない。しかし、決めた目標に突き進む中国のパワーには依然として目をみはるものがある。

 隣国であり、アジアのライバルである、「分水嶺」をむかえた中国サッカー。プロリーグはどう変わっていくのか。はたしてJリーグを目指せるのか、注目したい。
(了)

※人民元、ユーロは2021年4月13日時点のレートで日本円に換算

by 北 コウタ
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