カルチャー

訪れてみたい、“サッカー侍”が戦った街 ― ジェノバ(イタリア)

ジェノバの空撮
イタリア最大の貿易港として発展したジェノバの街
 日本サッカーの成長とともに、いまや日本人選手の海外移籍は後をたたない。それはヨーロッパのみならず、世界各国に及んでいる。そんな“サッカー侍”たちが、かつて戦った街がある。いま戦っている街がある。それだけで、「いつか訪れてみたい…」。そう思わせる魅力がある。

「アジア人初のセリエA選手」として三浦知良が渡った

ジェノア時代の三浦知良
長髪をなびかせるジェノア時代の三浦知良

 イタリア北西部にあるリグーリア州の州都ジェノバ。“キング・カズ”こと元日本代表FWの三浦知良(カズ)が、当時世界最高峰のプロサッカーリーグと称された「セリエA」初のアジア人選手として渡った街だ。

 カズは1994年にヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)から1年間のレンタルという形で、ジェノアCFCに期限付きで移籍した。21試合に出場し、シーズン1得点と思うような結果は残せなかったが、長髪をなびかせ疾走する“サムライ”の姿に日本のサポーターは釘付けになった。

 ジェノアでプレーした日本人選手はカズのみだが、同じくジェノバを本拠地とするUCサンプドリアでは、元日本代表の柳沢敦氏(現・鹿島アントラーズユース監督)が2003年から1年間プレーした。そして、2020年からは現日本代表主将の吉田麻也が同クラブに在籍している(2021年8月現在)。

 

イタリア最大の貿易港。中世の栄華しのばせる世界遺産「ガリバルディ通り」

ジェノバは赤い★の地点

 地中海の一部、リグリア海に面した港湾都市のジェノバは、産業が発達したミラノやトリノがある北イタリアを背後にもつ。そのため、ジェノバ港はイタリア最大の貿易港として栄え、物流の拠点として人々がにぎわう。人口約57万人は国内6番目の多さだ(2019年時点)。

 地理的な好条件を活かし、中世から海運業や軍港として繁栄したジェノバは、1005年から1797年の間には周辺を含む都市領邦「ジェノバ共和国」を形成して発展を遂げた歴史をもつ。

 しかし、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍の侵攻により1797年にフランスに併合。ナポレオン失脚後は1815年のウィーン会議を経て、サルデーニャ王国に編入された。その後、サルデーニャ王国がイタリア半島を統一したことで、ジェノバはイタリアの中核都市の一つとなり、現在に至る。

 こうした歴史的背景をもつジェノバの街には、中世の面影がいまも残り、美しい景観が観光客を魅了している。その中の一つが、パラッツォ(宮殿)郡が建ち並ぶ「ガリバルディ通り」だ。

 かつては「ストラーデ・ヌオーヴェ(新通り)」と呼ばれたが、1882年にイタリア統一の英雄ジュゼッペ・ガリバルディの名を取って改称された。この界隈には、ジェノバ共和国時代に迎賓館の役割を担った宮殿や貴族の私邸が多く集まっており、当時の栄華をしのばせる。

 2006年に「レ・ストラデ・ヌオーヴェとパラッツィ・デイ・ロッリ制度」という名称で世界遺産に登録された。ジェノバ観光で外せない人気スポットだ。

ジェノバのガリバルディ通り
共和国時代の宮殿が建ち並ぶガリバルディ通り(source: Superchilum,CC BY-SA 4.0,via Wikimedia Commons)

 このほか、大航海時代にアメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスは1451年にジェノバで生まれた。現在、その生家跡には18世紀に復元されたコロンブスの家が建っている。

 また、1970年代の日本の人気アニメ『母をたずねて三千里』の主人公マルコは、1882年にジェノバの港からアルゼンチンのブエノスアイレスに出稼ぎに行った母親を捜しに旅に出たことで有名だ。

ピザの原型? イタリア料理に欠かせない「フォカッチャ」はジェノバ発祥

フォカッチャ
焼きたてのフォカッチャ

 パスタやピザをはじめ、日本でも日常的に食べられるイタリア料理。その中でジェノバ発祥のものを紹介したい。

 イタリア料理のお供に欠かせない「フォカッチャ」は、イタリア語で「火で焼いたもの」を意味する。強力粉やイースト、オリーブオイルなどを原料とした生地を棒や手でのばし、石窯やオーブンで焼き上げる平たいパンだ。

 フォカッチャは古代ローマ時代から作られていたとされ、ピザの原型との説もある。本場イタリアでは料理のつけあわせだけでなく、ビールや炭酸ジュースと一緒につまみとしても食べられる。

ジェノベーゼパスタ
ジェノベーゼをあえた生パスタ

 香りが豊かで、濃厚な味わいが魅力のバジルソース「ジェノベーゼ」は、その名の通りジェノバ発祥だ。

 バジルペーストに松の実、チーズ、コショウ、オリーブオイルなどを混ぜ合わせたもので、肉料理、魚料理などあらゆるイタリア料理に使われる。

 ジェノバを訪れたなら、ジェノベーゼをあえた生パスタを味わいたい。彩りも鮮やかで、見るだけで食欲をそそる。

本拠地が同じジェノアとサンプドリア。直接対決は「灯台ダービー」!

 イタリア語でサッカーは「カルチョ」と言う。そして、カルチョはもはや文化だ。そんなイタリアで同じ街に2つのクラブが存在すれば、直接対決の盛り上がりは想像に難くないだろう。

 ジェノバを本拠地とするジェノアCFC(Genoa Cricket and Football Club)とUCサンプドリア(Unione Calcio Sampdoria)。両クラブの対戦は、市内の港湾地区にある大灯台「トッレ・デッラ・ランテルナ」にちなんで「灯台ダービー(デルビー・デッラ・ランテルナ)」と呼ばれている。

by KEGEN PRESS編集部
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