サッカー脳を育む

知りたい! 55歳のプロサッカー選手、カズのコンディショニング

雑誌ターザンの表紙を飾った三浦知良
Tarzan(ターザン)』831号の表紙を飾った三浦知良(カズ)選手

 日本サッカー界の“キング”こと三浦知良選手(以下、カズ)が、4月に発売されたフィットネス雑誌『Tarzan(ターザン)』831号の表紙を飾った。

 本号のテーマは「疲れないカラダ」。その特別インタビューとして、「55歳の現役アスリート 三浦知良に聞きたい55の質問」に答えた。カズを崇拝するサッカーバカならすでにチェック済みだろう。

 近ごろのカズは「中年の星」と言われることもある。体脂肪率の低い、引き締まった体。グレーでもフサフサの髪。こんなにカッコいい55歳はなかなかいない。ずるい!と思っている同世代のオジサンは多いはずだ。なにせ、“少年のような笑顔”でいまもボールを追いかけているのだから。

 そんなカズのメンタルやコンディショニングについては、競技の枠をこえて多くのアスリートが関心を寄せている。われわれシニア世代のサッカーバカにいたっては知りたいことだらけ。盗みたいことが山ほどある。

 「55の質問」には、テーマにちなんだ疲労回復に関することだけでなく、「55歳のプロ選手」としてどうサッカーに向き合っているのかを探る質問もあった。

 ただ、一問一答形式なので、あっさり読み終えてしまうページ数はちょっと物足りない。もう少しボリュームのある特集記事にしてほしかった…。また次回にお願いします!

20分の昼寝でも、「復活したぞ!」とポジティブに考える

 カズの答えから伝わるのは、「コンディションづくりに役立つことやモノは何でも取り入れよう」とする貪欲さ、物事を常にポジティブにとらえようとする姿勢だ。

 例えば食事。何をどう食べるかはもちろんだが、カズは「時間栄養学を踏まえていつ食べるかにもこだわっている」という。消化吸収にゆとりを与え、効率的にエネルギーと栄養が摂れるよう、食べる時間帯を気にしている。

 コンディショニングは、誰かの方法論をそっくり真似ることはしない。「自分で試し、合うものだけをミックスし、独自に体系化している」という“カズ流”だ。いままで出会ったコーチなどからの「いいとこ取り」。長いプロ生活の経験が活かされている。

 また、回復が遅くなった体の疲れはポジティブ思考でカバー。「わずか20分の昼寝でも、『復活したぞ!』と思うようにしている」と前向きにとらえる。

「カズ」は、「三浦知良」がマネジメントしている別人格

 興味深かったのは、「カズ」は「三浦知良」がマネジメントしている別人格で、「僕らは2人います」という話。

 例えば、試合に出られないとき、ベンチの外から試合を見ているとき。素直にチームを応援できない自分がいると、それを嫌だなあと思っている「カズ」と、それでいいという「三浦知良」がいるという。

 2人は常に同時にいて、「三浦知良」は、「カズ、お前はグラウンドで試合に集中して一生懸命やれば、それでいい」と言ってくれるそうだ。

 ACミラン入団時の本田圭佑の「リトル本田」を思い出したが、一流選手になるともう一人の自分が客観視してくれるのかもしれない。「カズ」が心のバランスを崩さずサッカーに打ち込めるよう、「三浦知良」がいつもそばでケアをしているということだろうか…。

年齢を重ね、メンタルケアに変化。心が折れそうなときは?

 長く在籍した横浜FCが昨季にJ2降格となり、カズは今季からJFLの鈴鹿ポイントゲッターズに活躍の場を移した。昨季はJリーグ出場1分のみ。出場機会を求め、新しい挑戦に踏み切った。だが、移籍交渉中には現役続行に対する厳しい声もあった。

雑誌ターザンのカズの記事
“少年のような笑顔”でサッカーを楽しむカズ

 年齢を重ね、カズはメンタルの成長を感じているという。若いころは反発していた批判も、いまでは「『僕は僕で自分の仕事をすればいい』と受け止める心の余裕がある」と話す。

 20代後半の絶頂期に発行された『足に魂こめました ー カズが語った「三浦知良」』(一志治夫著)という本がある。そういえば、本の中でカズは、心がダウンしたときの対処法についてこう語っていた。

 人間というのは必ず勇気がなくなるときがあるでしょう。僕でもありますよ。そういうときに、たとえば自分の出た番組のビデオ(かつて放送されたカズのドキュメンタリー番組)を見て、いままで築き上げてきたものをもっと大事にしないといけないんだって思ったりする。そういうことをして、自分自身を引っ張っていくこともあるんです――。

 では、いまのカズはどうか。「心が折れそうなときはどうしますか?」に対する答えはこうだ。

 『男はつらいよ』を観る――。
 
 カズの「寅さん」好きは有名だが、対処法のギャップがまたいい…。若いころは心を鼓舞したが、いまは落ち着かせる。180度変わった。そして、こう続けている。

 ベンチメンバーに入って試合に臨んだのに、出られずに終わったとき、監督の顔は見たくない。そういうときタブレットで寅さんを観ていると、心が落ち着きます。監督が何か話しかけてきても、『それを言っちゃあ、おしまいよ』と話せばいい(笑)――。

 きっと心の変化も楽しみながら、情熱を注いでいるのだろう。現所属の監督は兄の三浦泰年氏だが、どう対応しているのか…。

 とにかく、今季の初ゴールが早く見たい。カズのコンディショニング。盗みたい人はぜひ一読を!

(了)

by 北 コウタ
LINEで送る
Pocket