韓国サッカーと「兵役」事情。免除制度の恩恵で「選手の実力が落ちた」?
韓国の男子サッカーは、2012年のロンドンオリンピックでの銅メダル獲得と2014年の仁川アジア大会優勝によって、計38人の選手が兵役免除となった。しかし、その後の2014年と2018年のワールドカップはいずれも予選リーグで敗退。兵役免除の恩恵が代表チームの強化につながっていないと、チャ・ボングン氏は言いたかったのかもしれない。
加えて言えば、彼のこの発言後、前述の2018年アジア大会の優勝でさらに20人の選手が兵役免除になった。では、2019年のAFCアジアカップはどうだったか。韓国はべスト8で涙をのんだ。
兵役免除と代表チームの不振に明確な因果関係はないにしろ、彼と同様の指摘は国内メディアを中心に少なからずあったという。
また、チャ・ボングン氏が嘆くのも無理はない。彼自身はドイツへ渡ったのちに兵役のために一旦帰国し、韓国空軍FCでプレー。除隊後に再びドイツへ渡った経歴を持つ。それでもブンデスリーガでの通算成績は、出場308試合で98得点という偉業を成し遂げた。「アジア人最多出場記録」は昨年6月に長谷部誠(フランクフルト所属)に抜かれるまで長く破られなかった。「入隊を準備期間だと考えて、トレーニングに励んだ」と現役当時を振り返っている。
「兵役が韓国サッカーの発展を妨げている」という意見がある一方、軍隊生活で培われる「勝ちにこだわるメンタリティ」が韓国サッカーの歴史を支えてきたという事実もある。それだけに、チャ・ボングン氏ら韓国サッカーの先輩世代は歯がゆさを感じているのかもしれない。
欧州帰りを惜しむクォン・チャンフンは東京五輪でメダル狙う
東京オリンピックに臨むサッカー男子韓国代表は、オーバーエイジ枠にキム・ミンジェ(中国・北京国安所属)、元ガンバ大阪のファン・ウィジョ(フランス・ボルドー所属)、クォン・チャンフン(水原三星所属)の3人を選んだ。
キム・ミンジェとファン・ウィジョの2人は、2018年のアジア大会優勝によりすでに兵役を免除されている。冒頭で伝えたキム・ハクボム監督のコメントは、「兵役免除を考慮せず、勝つためのメンバーを選んだ」ことを強調したわけだ。
残りの1人、クォン・チャンフンは、兵役に向けて今年5月にドイツから帰国。国内クラブに移籍したばかりだ。現在27歳と入隊期限が迫り、かつてのソン・フンミンと状況が似ている。
帰国後の会見では、「欧州でもっとプレーしたい気持ちはあったが、戻ってくるしかない状況だったのが惜しい」と本心を語った。きっと東京オリンピックでのメダル獲得に懸けているにちがいない。
クォン・チャンフンは兵役免除を勝ち取ることはできるのか。彼の今後の選手キャリアにも注目したい。
(了)