いざ女子W杯2023! 調べてわかった「なでしこメンバー」の“勢力図”
FIFA女子サッカーワールドカップ(W杯)2023オーストラリア&ニュージランド大会が7月20日に開幕した。心配されていた日本代表戦のテレビ中継も土壇場で決まり、仕事を休みにしていたサッカーバカたちも「ほっと」胸をなでおろしたところだろう。
ただ、国民の関心はいまひとつというところか。周囲は盛り上がっていますか?
ここからじわじわと盛り上げていこう。そのめにも、予選リーグ突破は絶対だ。頼むぞ、なでしこ! 決勝トーナメントへ進めば、きっとサムライブルーさながらの興奮の渦が日本中を巻き込むはず。そして2011年以来の世界の頂点へ…。
大会メンバー23人のサッカー歴 より詳しく調べてみた
希望を託す「なでしこジャパン」23人の顔ぶれについてはチェック済みの人がほとんどだろう。
でも、もう少し詳しく、選手の経歴を知っておきたい。そう思った。
4月に、W杯前最後の海外遠征に選ばれた候補メンバー25人の顔ぶれを海外組の経歴に注目しながら報じたが、今回はすべての選手についてより詳しく確認するのが目的だ。
そして調べてみると、現なでしこメンバーの意外な構成もわかってきた。
ということで、女子W杯2023本大会に出場する日本代表メンバー23人について、経歴に注目しながらまとめてみた。(丸で囲んだ数字は背番号。カッコ内の名前かな/に続く数字は、2023年7月20日の大会開幕時点の年齢)
〈GK〉
■山下 杏也加①(やました・あやか/27)
出身地:東京都足立区
所属:INAC神戸レオネッサ
経歴:村田女子高校(東京都/1年時にGKに転身) → 日テレ・ベレーザ(2014年~) → INAC神戸レオネッサ(2021年~)
■田中 桃子⑱(たなか・ももこ/23)
出身地:長野県駒ヶ根市
所属:日テレ・東京ヴェルディベレーザ
経歴:FC厚木ガールズ → 日テレ・メニーナ → 日テレ・ベレーザ(2018年~) → 大和シルフィード(2019年~2021年までレンタル移籍) → 日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2021年~)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
■平尾 知佳㉑(ひらお・ちか/26)
出身地:千葉県松戸市
所属:アルビレックス新潟レディース
経歴:JFAアカデミー福島(2009年~) → 浦和レッズレディース(2014年~2017年/2014年は特別指定選手) → アルビレックス新潟レディース(2018年~)
〈DF〉
■清水 梨紗②(しみず・りさ/26)
出身地:兵庫県神戸市
所属:ウェストハム・ユナイテッド(イングランド)
経歴:日テレ・メニーナ(2009年~) → 日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2013年~) → ウェストハム・ユナイテッド(イングランド/2022年8月~)
■南 萌華③(みなみ・もえか/24)
出身地:埼玉県吉川市
所属:ASローマ(イタリア)
経歴:浦和レッズレディースジュニアユース → 浦和レッズレディースユース(2014年~) → 浦和レッズレディース/三菱重工浦和レッズレディース(2016年~) → ASローマ(イタリア/2022年7月~)
☆2014 U-17女子W杯優勝メンバー
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■熊谷 紗希④(くまがい・さき/32)
出身地:北海道札幌市
所属:ASローマ(イタリア)
経歴:常盤木学園高校(宮城県) → 浦和レッズレディース(2009年~) → 1.FFCフランクフルト(ドイツ/2011年7月~) → オリンピック・リヨン(フランス/2013年6月~) → バイエルン・ミュンヘン(ドイツ/2021年5月~) → ASローマ(イタリア/2023年6月~)
☆2011 女子W杯優勝メンバー
★2015 女子W杯準優勝メンバー
■三宅 史織⑤(みやけ・しおり/27)
出身地:北海道札幌市
所属:INAC神戸レオネッサ
経歴:JFAアカデミー福島(2008年~) → INAC神戸レオネッサ(2013年~)
■高橋 はな⑫(たかはし・はな/23)
出身地:埼玉県鳩ヶ谷市(現・川口市)
所属:三菱重工浦和レッズレディース
経歴:浦和レッズレディースジュニアユース → 浦和レッズレディースユース(2015年~) → 浦和レッズレディース/三菱重工浦和レッズレディース(2018年~)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■守屋 都弥⑲(もりや・みやび/26)
出身地:奈良県北葛城郡上牧町
所属:INAC神戸レオネッサ
経歴:JFAアカデミー福島(2009年~) → INAC神戸レオネッサ(2015年~)
■石川 璃音㉓(いしかわ・りおん/20)
出身地:秋田県秋田市
所属:三菱重工浦和レッズレディース
経歴:JFAアカデミー福島(2016年~) → 浦和レッズレディース/三菱重工浦和レッズレディース(2022年~)
★2022 U-20女子W杯準優勝メンバー
〈MF〉
■杉田 妃和⑥(すぎた・ひな/26)
出身地:福岡県北九州市
所属:ポートランド・ソーンズFC(アメリカ)
経歴:藤枝順心高校(静岡県) → INAC神戸レオネッサ(2015年~) → ポートランド・ソーンズFC(アメリカ/2022年1月~)
☆2014 U-17女子W杯優勝メンバー(大会MVP受賞)
■宮澤 ひなた⑦(みやざわ・ひなた/23)
出身地:神奈川県南足柄市
所属:マイナビ仙台レディース
経歴:星槎国際高校(神奈川県) → 日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2018年~) → マイナビ仙台レディース(2021年~)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■猶本 光⑧(なおもと・ひかる/29)
出身地:福岡県小郡市
所属:三菱重工浦和レッズレディース
経歴:福岡J・アンクラス(2007年~) → 浦和レッズレディース(2012年~) → SCフライブルク(ドイツ/2018年6月~) → 三菱重工浦和レッズレディース(2020年1月~)
★2010 U-17女子W杯準優勝メンバー
■長野 風花⑩(ながの・ふうか/24)
所属:リバプール(イングランド)
出身地:東京都江戸川区
経歴:浦和レッズレディースジュニアユース → 浦和レッズレディースユース(2013年~) → 浦和レッズレディース(2014年~) → 仁川現代製鉄(韓国/2018年3月~) → ちふれASエルフェン埼玉(2019年1月~) → マイナビ仙台レディース(2021年1月~) → ノースカロライナ・カレッジ(アメリカ/2022年7月~) → リバプール(イングランド/2023年1月~)
☆2014 U-17女子W杯優勝メンバー
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー(大会MVP受賞)
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■遠藤 純⑬(えんどう・じゅん/23)
出身地:福島県白河市
所属:エンジェル・シティFC(アメリカ)
経歴:JFAアカデミー福島(2013年~) → 日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2018年~) → エンジェル・シティFC(アメリカ/2021年11月~)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■長谷川 唯⑭(はせがわ・ゆい/26)
出身地:埼玉県戸田市
所属:マンチェスター・シティ(イングランド)
経歴:日テレ・メニーナ → 日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2013年~) → ACミラン(イタリア/2021年1月~) → ウェストハム・ユナイテッドFC(イングランド/2021年8月~) → マンチェスター・シティ(イングランド/2022年9月~)
☆2014 U-17女子W杯優勝メンバー
■藤野 あおば⑮(ふじの・あおば/19)
出身地:東京都町田市
所属:日テレ・東京ヴェルディベレーザ
経歴:日テレ・メニーナ・セリアス → 十文字高校(東京都) → 日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2022年~)
★2022 U-20女子W杯準優勝メンバー
■林 穂之香⑯(はやし・ほのか/25)
出身地:京都府宇治市
所属:ウェストハム・ユナイテッド(イングランド)
経歴:セレッソ大阪レディースU-15 → セレッソ大阪レディース/セレッソ大阪堺レディース(2012年~) → AIKフットボール(スウェーデン/2020年12月~) → ウェストハム・ユナイテッド(イングランド/2022年9月~)
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■清家 貴子⑰(せいけ・きこ/26)
出身地:東京都田無市(現・西東京市)
所属:三菱重工浦和レッズレディース
経歴:浦和レッズレディースジュニアユース → 浦和レッズレディースユース → 浦和レッズレディース/三菱重工浦和レッズレディース(2014年~)
〈FW〉
■植木 理子⑨(うえき・りこ/22)
出身地:神奈川県川崎市
所属:日テレ・東京ヴェルディベレーザ
経歴:日テレ・メニーナ・セリアス → 日テレ・メニーナ → 日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ(2016年~)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
☆2018 U-20女子W杯優勝メンバー
■田中 美南⑪(たなか・みな/29)
出身地:タイ(母親の故郷。生後は神奈川県川崎市で育つ)
所属:INAC神戸レオネッサ
経歴:日テレ・メニーナ → 日テレ・ベレーザ(2012年~) → INAC神戸レオネッサ(2020年~) → バイエル・レバークーゼン(ドイツ/2021年2月~6月末までレンタル移籍) → INAC神戸レオネッサ
★2010 U-17女子W杯準優勝メンバー
■浜野 まいか⑳(はまの・まいか/19)
出身地:大阪府高石市
所属:ハンマルビーIF(スウェーデン)
経歴:セレッソ大阪堺ガールズ → セレッソ大阪堺レディース(2018年~) → INAC神戸レオネッサ(2021年8月) → チェルシー(イングランド/2023年1月~) → ハンマルビーIF(スウェーデン/2023年1月~レンタル移籍中)
★2022 U-20女子W杯準優勝メンバー(大会MVP受賞)
■千葉 玲海菜㉒(ちば・れみな/24)
出身地:福島県いわき市
所属:ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
経歴:藤枝順心高校(静岡県) → 筑波大学(2018年~) → ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(2018年~/筑波大学在学時から特別指定選手として登録)
★2016 U-17女子W杯準優勝メンバー
調べてわかった「なでしこ」を“席巻”する3つの下部組織
23人の経歴を詳しく見て、何か気づくことはないだろうか。ヒントは、育成年代時の所属チーム。
なんと23人中、15人が日テレ・ベレーザと浦和レッズレディースの下部組織、そしてJFAアカデミー福島の出身者である。
内訳は以下のとおりだ。
■ベレーザ下部組織OG… 田中桃子/清水梨紗/長谷川唯/藤野あおば/植木理子/田中美南
■レッズレディース下部組織OG… 南萌華/高橋はな/長野風花/清家貴子
■JFAアカデミー福島OG… 平尾知佳/三宅史織/守屋都弥/石川璃音/遠藤純
〈順不同〉
こうして見ると、なでしこジャパンのメンバー“勢力図”がよくわかる。ただの偶然か。それとも、やはり育成技術が突出しているからなのか。
3つの育成組織の出身者が現なでしこジャパンを“席巻”。逆に言えば、この3つを通過することは、将来的に日本代表入りの可能性を高める一つの手段なのかもしれない。(思えば、メンバー落選の岩渕真奈はベレーザ下部組織OG)
当初はここに、林穂之香と浜野まいかの出身であるセレッソ大阪堺レディースも加えようと考えたが2人なので差し控えた。ただ、最終メンバー候補25人から落選した宝田沙織( リンシェーピングFC所属/スウェーデン)も同じ出身だ。
このほか、2019年女子W杯大会メンバーの北村菜々美(日テレ・東京ベルディベレーザ所属)など、セレッソ大阪堺レディースもまた、近年アンダー世代を含め日本代表を多く輩出している育成組織であると言える。
23人中、16人がアンダー世代のW杯で優勝・準優勝を経験
そしてもう一つ、メンバー23人の経歴からわかかること。それは、アンダー世代のW杯での実績、経験値の高さだ。
U-17、U-20におけるFIFA主催のW杯で優勝、準優勝を経験したメンバーがやたらに多い。23人中、16人もいる。選手選考の基準の一つに、国際大会での経験が豊富で実績のある選手を軸にしたことがうかがえる。
中でも、10番の長野風花の経歴と実績がすさまじい。
いまでこそイングランドの名門リバプールに所属する彼女だが、かつては韓国リーグやなでしこリーグ2部のクラブを渡り歩いた。目まぐるしい移籍。向上心のおもむくままに選手キャリアを歩んできたことが、たった数行の経歴を見ただけで伝わってくる。
まだ24歳だが、長野には10番を背負うだけの経験と実績、ポテンシャルがある。
ユース年代のW杯で輝きを放ち続けてきた彼女が初めて挑む年齢制限のないW杯。どんなプレーを見せてくれるのか。いまから楽しみでしかたがない。
◇
今回、メンバー23人の経歴のほかに選手の出身地も記した。選手と同郷だとわかると応援にも力が入るからだ。ふだんサッカーを見ない人にとってはけっこう重要な情報だと思う。
ちなみに、DFの熊谷紗希と三宅史織は私と同じ北海道出身。道民の期待を一身に背負う2人にはやっぱり個人的にエールを送りたくなる。(見せてやれ~、道産子のチカラ!)
2011年W杯ドイツ大会でなでしこが立った「世界の頂き」。見渡した「あの景色」。あれから12年。再現を目指す挑戦がいよいよ始まった。もう一度連れてってくれ、あの場所へ。もう一度見せてくれ、あの景色を!
(了)