WEリーグ&なでしこ

コロナ禍に初年度終えた「WEリーグ」 ホーム試合のクラブ別入場者数は?

WEリーグの東京での開幕ゲーム

 昨年9月に開幕した日本初の女子サッカープロリーグ「WEリーグ」の最初のシーズンが、5月下旬に終了した。

 振り返れば、無観客で開催された東京オリンピックの直後に開幕。期待していた大物外国人選手の加入はみられず、コロナ禍の困難な時期での船出だった。2023年にFIFA女子ワールドカップ、2024年にパリ・オリンピックが控えることを考えれば、開幕延期などの選択肢はなかっただろう。

 最初のシーズンを終え、初代チェアの岡島喜久子氏はスポーツ紙の取材に対し、初年度は「70点」と評価した。パスや判断など、選手のプレースピードが格段に速くなったと技術面の向上に手応えを感じた一方、集客に関しては、予算を充てた割に露出が少なく、観客動員につながらなかったと課題を口にした。

 開幕前、1試合5000人の集客目標を掲げたWEリーグだったが、結果は1試合平均1560人。コロナ禍の影響は大きかった。それでも、新しくなった国立競技場で5月に行われたINAC神戸レオネッサと三菱重工浦和レッズレディースの試合には1万2330人が足を運び、2年目への期待を抱かせた。

 大成功の大盛りあがりで初年度を終えるよりも、少し低空でスタートしたと考え、徐々に上げていけばいい。今季よりも来季、来季よりも再来季と。まずはコロナ禍の中、すべての試合が開催できたことをポジティブにとらえたい。

WEリーグ初代王者のINAC神戸 ホーム試合集客数でもトップ

 とはいえ、新型コロナウイルスの影響があったにせよ、今季のクラブ別の集客数やクラブ間の差はどの程度だったのか。気になった。そこで、WEリーグの公式データをもとに、表にまとめてみた。

 今季は11クラブがホーム&アウエーを戦った。各クラブの試合数は20試合で、そのうちホームゲームは半分の10試合になる。下の表は、そのホームゲーム10試合の入場者数の合計が多かった順に、上からクラブ名を並べたもの。合計数以外にも、ホーム開幕日と最終日、10試合中の最多日と最少日の入場者数なども表記した。

 初代王者に輝いたINAC神戸レオネッサは、ホームゲームの入場者数合計でもトップだった。しかし、これには前述の国立競技場における1万2330人が含まれている。そのため、正確な比較とは言えないかもしれないが、たとえ国立での試合がなかったとしても、合計数は2万人前後にはなっただろう。

WEリーグ初年度のクラブ別ホーム入場者数

新発足の大宮VENTUS リーグ戦不振もホーム集客数は2位に

 WEリーグ参入のために新発足したにもかかわらず、予想を上回る観客動員をみせたのが大宮アルディージャVENTUS。リーグ戦の成績は9位と振るわなかったが、ホームゲームの入場者数合計では2位。同じ埼玉県さいたま市内の三菱重工浦和レッズレディースを1400人ほど上回った。INAC神戸レオネッサの国立競技場でのホームゲームがなければ、1位になっていた可能性もある。

大宮アルディージャVENTUSのサポーター
大宮アルディージャVENTUSのサポーター(source: getty images)

 大宮は、浦和とともにJリーグに男子のクラブがある。集客につながりやすい環境があった。両クラブによる「さいたまダービーマッチ」が開催できるのも魅力だ。

 また、10試合すべてをJR大宮駅から徒歩圏内の「サッカー専用」のNACK5スタジアムで開催できたことも大きかったかもしれない。市民の憩いの場としてにぎわう大宮公園内にある。

 ホーム最終日の神戸戦では「大感謝祭」を実施。ファンクラブ会員や地域の小中学生を無料招待し、その他は500円チケットを販売。3281人が来場した。

ホームスタジアム変更の影響が感じられた日テレ・ベレーザ

 なでしこリーグ時代からの人気クラブ、日テレ・東京ベルディベレーザは1万6880人の4位だった。2万人台前半の2位大宮、3位浦和とは少し差がついた感じがある。これまでホームゲームは、結城市、多摩市、調布市にある競技場で行ってきたが、WEリーグ開幕を機に、味の素フィールド西が丘(東京北区)にホームスタジアムを変更した。その影響は少なからずありそうだ。

 従来のホームタウンである稲城市、日野市、多摩市、立川市に加え、新たに北区とその隣の板橋区を追加したが、新地域の住民の認知度はまだ低そうだ。一方、東京西部のサポーターにとっては、ホームゲームまでの道のりが遠くなってしまった。

 今年3月の第14節、日テレ・ベレーザは北区内に在住・在勤・在学する人たちを対象とした「北区民観戦デー」を実施した。22歳以下と65歳以上は無料招待とし、その他は1000円とした。しかし、入場者数は1038人。ホーム10試合のうち下から2番目の少なさだった(ちなみに天候は晴れ)。

 味の素フィールド西が丘はスタンドとピッチが近く、サッカー観戦に最適な専用スタジアム。超おすすめだ。一度足を運んでもらえば、リピーターも見込める。最初の数年は、魅力を伝えるための工夫や努力の継続が必要になりそうだ。

「秋春制」で環境変化の降雪地域 新潟は「集客苦戦」の印象

 大宮と同じく、新規にクラブを発足させたサンフレッチェ広島レジーナは成績、入場者数合計ともに6位。手応えを感じたスタートシーズンだったのではないだろうか。

 一方、意外に少ないと感じたのがアルビレックス新潟レディース。10試合の合計が1万人にとどかなかった。過去に「皇后杯準優勝」経験が4度あり、代表選手も多く輩出してきたクラブ。Jリーグの男子クラブもあるが、集客に苦戦した印象だ。

 降雪地域の新潟はこれまで雪解けとともにシーズンが開幕し、シーズンオフに入ると次の冬を迎えた。だが、「秋春制」を導入したWEリーグにより、今季からは約3カ月のシーズン中断期間に冬を過ごした。マイナビ仙台レディースも同じだが、影響はあったのだろうか。環境の変化による生活様式や心理面の微妙な変化など、そこに暮らす人々にしか分からないこともありそうだ。

 ちなみに、新潟と仙台は今年4月の第17節に、東京の味の素フィールド西が丘を会場にして対戦している(仙台のホームゲームとして)。入場者数1505人は、仙台にとってはホーム開幕戦に次ぐシーズン2番目の集客数だった。一方、新潟にとってはアウエー戦の位置づけだったが、ホーム開幕戦の1423人(シーズン最多)を上回った。

 新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあるなか、2年目の新シーズンはどうなるのか。開幕時の声出し応援の解禁や、大物外国人選手の加入を期待したい。また、初年度の課題をふまえた各クラブの新しい取り組み、岡島チェアの次の一手も気になる。

(了)

by 北 コウタ
LINEで送る
Pocket