W杯出場は至上命令。サッカー中国代表「帰化選手」急増のワケ
李鉄監督によって選ばれた帰化選手5人の顔ぶれは次のとおり。(年齢は2021年5月15日時点)
■ニコ・イェナリス(中国名:李可)
北京国安所属/イングランド出身/MF/27歳/2019年1月に帰化
アーセナル(イングランド)の下部組織で育ち、トップ昇格後にプレミアリーグ1試合出場。イングランドのU-17、U-18、U-19で代表歴がある。レンタル中のウィコム(イングランド)から2019年に北京国安に移籍。父親がキプロス人で、母親が中国人。
■エウケソン(中国名:艾克森)
広州FC所属/ブラジル出身/FW/31歳/2019年8月に帰化
ボタフォゴ(ブラジル)を経て2012年に広州恒大(現・広州FC)に移籍。中国スーパーリーグ・2013年シーズンに24得点、2014シーズンに28得点をあげ、2年連続得点王。2011年にブラジル代表に初招集されるも出場はなし。
■アラン(中国名:阿蘭)
広州FC所属/ブラジル出身/FW/31歳/2019年に帰化
フルミネンセ(ブラジル)、レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)を経て2015年に広州恒大に移籍。5年間在籍したザルツブルクでは公式戦129試合に出場し、93得点37アシストを記録。天津天海、北京国安でもプレー。
■フェルナンジーニョ(中国名:費南多)
広州FC所属/ブラジル出身/FW/28歳/2019年10月に帰化
名門フラメンゴ(ブラジル)などでプレーし、GDエストリル・プライア(スペイン)を経て2015年に重慶力帆にレンタル移籍、2016年に正式加入。2019年に広州へ移籍。
■ティアス・ブラウニング(中国名:蒋光太)
広州FC所属/イングランド出身/DF/26歳/2019年9月に帰化
エバートン(イングランド)の下部組織で育つ。プレミアリーグに7試合出場。イングランドのU-17、U-19、U-21で代表歴がある。レンタル中のサンダーランド(イングランド)から2019年に広州恒大に移籍。祖父が広東省出身の中国人。
ニコ・イェナリスは「中国代表初の帰化選手」として、2019年6月のフィリピン戦で代表デビュー。母親が中国人であるため、北京国安への移籍と同時に中国籍を取得した。
エウケソンはアジア・チャンピオンズリーグでJリーグクラブと対戦した経験が多い。日本人にもよく知られた選手だろう。リッピ監督時代にニコ・イェナリスとともに代表に選出され、2019年のW杯アジア2次予選に出場。モルディブ戦では2得点をあげている。代表初の「中国にルーツを持たない帰化選手」だ。
アランとフェルナンジーニョはともに2019年中に中国籍を取得。しかし中国にルーツがないため、FIFAの規定により国籍変更には5年以上の中国居住歴が必要だった。昨年に条件を満たし、初招集となった。
ティアス・ブラウニングは祖父が中国人というルーツを持つ。過去にイングランドU-21代表としてFIFA認定のトゥーロン国際大会などに出場したため、中国代表でのプレーが認められていなかった。
しかし、昨年9月のFIFA総会で選手規定が一部改正され、「国際試合の出場経験があったとしても、21歳以前であれば国籍変更が認められる」ことに。ブラウニングは晴れて中国代表になった。昨年のアジア2次予選がコロナ禍により延期となっていただけに、中国代表にとっては想定外の追い風となった。
帰化選手からFW3人が招集されていること考えると、李鉄監督の本気度が伝わってくる。名将リッピの後任としてW杯予選を引き継ぐ重圧は相当なものだろう。
しかし、中国代表が置かれている状況は極めて厳しい。