岡田武史元監督と闘莉王氏が日本サッカーに提言。「多様性が必要。強化の方向性、変える時期」
岡田氏のイメージはこうだ。「みんなで日本のサッカーをこうしていきましょう」ではなく、Jリーグのクラブがそれぞれ工夫して、多様な選手を集め、多様性のあるチーム作りをする。そうしたクラブから選手を選ぶことで、これまでとは違う日本代表になる。カギは「多様性」だという。
元日本代表の香川真司が中高生時代を過ごした宮城県のクラブは、パスよりもドリブル向上に重きを置くことで知られる。また、JFL所属のいわきFCは、ラグビー選手並みの体型を全員が目指すフィジカル重視のチーム作りが近年話題になった。
選手が多様になれば、日本代表もおのずと変わってくる。岡田氏は、現在のJFA主導の強化方針に沿った画一的な育成方法では、主体的にプレーできる選手が育ちにくいと考えているのではないだろうか。
“自立した選手”を育てたい。独自の「岡田メソッド」を実践中
日本代表が次の段階に進むためには何が必要か?
この質問に対し岡田氏は、「主体的にプレーできる、自立した選手」と答えた。「こういうときはどうするんですか?」と指示を待つのではなく、追い込まれても主体的にプレーできる選手だという。
例にあげたのは、2015年のラグビーW杯。日本が南アフリカを破った番狂わせの一戦だ。後半のラストプレー、同点のキック・ゴールを指示した監督を無視し、日本の選手たちは逆転のトライを狙い、劇的な勝利を決めた。
ラグビーの日本代表には外国人選手も多く含まれる。岡田氏は「日本人選手だけだったら、絶対にやらなかった。(サッカーも)こういう選手が出てこないと」と、自立した選手の必要性を語った。
そして闘莉王氏は、東京オリンピック準決勝のスペイン戦で日本代表に足りなかったものこそが、それだったと指摘。「ピッチの外にいる監督と、中にいる選手とでは(試合の)感じ方が違う。経験を積んだ選手は、いまはこうした方がうまくいくと分かるもの。そういうときは、監督の考えとズレがあったとしても、選手は自分の考えをもっと発信するべき。育ちや文化の違いもあるが、日本の選手は『ミスをしたら監督に怒られる』とチャレンジを恐れて発信しない」と話した。
ラグビー日本代表のような自立した選手を育てたい。
岡田氏は現在、自身がオーナーを務めるJリーグ・FC今治の下部組織で、「岡田メソッド」と名付けた独自の選手育成法を実践中だ。2019年には一冊の本にまとめて出版し、反響を呼んだ。
岡田メソッドは、サッカーの原則(プレーモデル)を16歳までに落とし込み、それ以降は自由にプレーさせる。発案のヒントはスペインの育成法から得たという。選手を型にはめるのは16歳まで、それからは自分で考えてプレーさせるというわけだ。岡田氏は「こういう方法でやれば、自立した選手が出てくるんじゃないかとテストしている」と期待を膨らませる。
各クラブによるこうした独自の取り組みが、「多様性のある日本サッカー」の構築につながると岡田氏は考えている。
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9月上旬、「JFA創立100周年」を祝う記念式典に出席した岡田氏は、挨拶の中でJFA主導の強化の見直しと「多様性」の必要を訴えた。JFA参与(名誉役員)でもある岡田氏。今後、その提言は議論されるのだろうか。注目したい。
(了)