《FC東京応援レポ》ブレイク期待の若手選手に出場機会を!― 熊田直紀
東京生まれでFC東京サポーターのクンさんによる応援レポートをお届けする。今回のテーマは来季に向けてブレイクを期待する若手、FWの熊田直紀選手について。 |
Jリーグ2023年シーズンも終盤に差し掛かってきた。FC東京は24節終了時点で11位。6月に就任したピーター・クラモフスキー監督体制になってから少し持ち直してはいるものの、依然としてACL圏内は厳しい状況だ。加えてJ2降格の心配がないため、サポーターからすると少し刺激の足りない期間かもしれない。
シーズンは残り8試合。優勝・ACLを目指す上位クラブや残留に必死な下位クラブは結果を最優先に戦うことが求められる。中位クラブも当然結果が必要なわけだが、来季に目を向けたチーム運営にも注力したい。
そこで今回は、残り試合で出場機会を与えてほしい、来季以降大きくブレイクすることを期待する若手選手を紹介したい。
FC東京U-18でゴールを量産し、トップ昇格したFW熊田直紀
熊田直紀(くまた・なおき)の名前は、今年3月に行われたAFC・U-20アジア杯で覚えたという人が多いのではないだろうか。同アジア杯で5ゴールをあげて大会得点王に輝き、U-20W杯出場権獲得に大きく貢献した。
福島県出身の19歳。ポジションはFW。中学進学時にFC東京U-15むさしに加入し、FC東京U-18在籍中の2022年2月に2種登録選手としてトップチームに登録された。
昨年はFC東京U-18でゴールを量産。特にクロスからのバイシクルボレーや、日本人離れした跳躍力と181cm79kgの体格から繰り出されるヘディングによるゴールで、すでに青赤サポーターの心を掴んでいた。満を持してトップに昇格した今季は、4月1日のJ1第6節サガン鳥栖戦でJリーグデビューを果たした。
熊田の魅力はクロスへの反応の速さや空中戦での強さだ。
恵まれた体格を活かし、やや劣勢なボールでも、競り合いで五分に持っていく力がある。FC東京でポジションを争うディエゴ・オリヴェイラやペロッチと比較しても、空中戦の強さは引けを取らない。ダイナミックなプレーが売りだ。
非凡な得点センスも、ディエゴらライバルの壁高く 課題は?
そんな熊田だが、トップチームの壁は高く、出場機会をあまり得られていない。今季はJリーグ3試合で1得点、ルヴァン杯は5試合で1得点にとどまっている(9月13日時点)。
誰もが認める非凡な得点センスを持ち、順調にステップアップしてきた彼が、なぜここまで苦戦を強いられているのか。飛躍のために必要な1ピースは何か。
それは「器用さ」だろう。
主力として今季もチームを牽引するディエゴとの最大の差であり、FC東京がセンターフォワードに最も要求する要素だ。それは攻守両面においていえる。
■熊田に求められるのはプレーの「器用さ」だ
まずは攻撃面だが、熊田は基本的に中央に留まりフィニッシャーとして役割を果たそうとするタイプだ。ロングボールのターゲットマンとしては十分通用するレベルにある。
だが、FC東京がセンターフォワードに求める役割はより多岐にわたる。
ボールが落ち着かない時は降りてきてボールを収め、時間を作りチームに余裕をもたらすこと。3列目から飛び出してくる松木玖生やウイングを活かすためのフリーランニングを怠らないこと。いずれも高いレベルでこなさなければならない。どちらも簡単なことではないが、ディエゴは容易にこなしている。彼を越えて出番を得るには、ディエゴのプレー、「器用さ」を盗んでいく必要がある。
次に守備面。クラモフスキー新監督は、大枠の部分でアルベル前体制の守備スタイルを踏襲した。中央のディエゴがスイッチを入れて、それに呼応してプレスを積極的にかけていくものだ。
ところが、熊田やアダイウトン、ペロッチといったディエゴ以外がセンターに入った場合、プレスに行くタイミングやウイングとの意思疎通が洗練されていない。ウイングが準備できていないのに一人でプレスをかけてしまい、簡単にいなされるシーンが頻発してしまうのだ。
守備の連携については試合経験を積むことで改善されるため、外野がとやかく言うのは正直難しい。だからこそ、クラモフスキー監督には出場機会の少ない選手の起用や、様々な選手の組み合わせを試してほしい。
アジア大会出場で再びチームを離れる… J1復帰は10月以降か
攻・守、2つの面から熊田の課題を挙げてみたが、やはり最速で彼のレベルを上げられる方法は定期的に出場機会を与えることだろう。
熊田と同時期にトップ昇格した俵積田晃太は、アルベル体制の序盤はコンスタントに出場していたものの、シュートやパスの精度に課題があり徐々に出場機会が減った。ところが、クラモフスキー監督就任後はスタメンに定着。9試合に出場し、左サイドからのクロスでJリーグ初アシスト含む2アシストを記録している。
俵積田のキックの質は出場を重ね少しずつ改善されてきているため(得点も出てくるといいのだが)、熊田もJリーグの試合スピード・強度に慣れさえすれば、という期待がある。
ただ、熊田はまもなく中国・杭州で開催されるアジア競技大会(男子サッカーの日程は9/19~10/7)に臨むU-22日本代表メンバーに選出された。(*)
喜ばしいことだが、3月のアジア杯、5月のU-20W杯に続き、再びクラブを離れることになった。残り8試合のJリーグ出場は、日本が優勝した場合は10月以降になってしまう。
こればかりは仕方がない。中国で再び得点王に!「FC東京のクマちゃん」(熊田の愛称)の覚醒をファン・サポーターは心待ちにしている。
(了)
*… 本記事を配信した2日後の9月15日、日本サッカー協会(JFA)は熊田直紀が怪我のためアジア競技大会に不参加となったことを発表した。