海外サッカー

急成長中のベトナムサッカーは、長期的な視点で「2026年W杯」出場を目指す

2018スズキカップを制覇したベトナム代表
成長を確信した2018年のAFFスズキカップ優勝(source: en.vff.org.vn

サッカー先進国の経験から学び、世界との差を縮める

 躍進の要因は何か。ベトナムサッカー連盟(Vietnam Football Federation/以下、VFF)のトラン・クオック・トゥアン副会長は2019年当時、インタビューで次のように語っている。

 「ベトナムはサッカー発展途上国だ。サッカー先進国の経験から学ぶ必要があり、この5年間、国際協力を拡大してきた。ベトナムには『近道を行き、先手を打つ』という言葉があるが、成長のスピードを上げ、世界との差を縮めるためには良い解決策だ」

 「VFFは2026年W杯の出場を目指している。強い代表チームを作り、国内クラブを発展させるためにはさらなる投資と支援が重要だ。先進国のアカデミーとつながることを支援し、アンダー世代の育成協力を拡大させたい。PVFアカデミーのように、経済界や民間組織がクラブに関わることを奨励していく」

■ 育成拠点は2008年設立のPVF「プロ養成アカデミー」

 コメント中のPVFとは、プロサッカー選手養成に特化したアカデミーである。正式名称は「ベトナムサッカー選手才能開発投資ファンド(The Promotion Fund for Vietnamese Football Talent、略称PVF)」。国内複合企業最大手のビングループなどが出資し、2008年に設立された(注3)。

PVFアカデミー
最新鋭のプロ養成環境が整うPVFは、いわば “ベトナム版のJヴィレッジ”だ(source: pvf.com.vf

 ベトナム全土から選ばれた将来有望な青少年が、寮生活をしながらプロ選手を目指している。設立以来、年代別のベトナム代表を多数輩出。2017年には元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏がテクニカル・ディレクターに就任。世界から優秀な指導者が揃う。トルシエ氏はその後、U-19ベトナム代表監督も兼務した(2021年5月に退任)。

 PVFは民間の組織だが、VFFと連携を密にしながら育成計画を実行。国家プロジェクトのようなものだ。2017年に新設のトレーニングセンターは、広大な敷地にフルコート7面(天然芝4面、人工芝3面。うち1面は、国内初の屋内サッカーコート)のほか、ジムや屋内プールなど最新鋭の設備が整う。各年代のベトナム代表チームも強化合宿で使用している。

 VFFは、PVFをロールモデルとした民間出資のアカデミーやクラブを増やし、ベトナムサッカーの底上げを図りたい考えだ。

韓国人監督のパク・ハンソがもたらした「意識改革」

 1990年代以降、ベトナム代表はヨーロッパやブラジルの指導者を監督に起用していた。しかし、2014年に元Jリーグ監督の三浦俊也氏を抜擢してからは、アジアの強豪国の指導者に目を向けているようだ。とりわけ、現監督のパク・ハンソ(朴恒緖)氏の成功には大きな手応えを感じているだろう。

 パク監督は、韓国代表のヘッドコーチとしてW杯2002日韓大会4位を経験。韓国U-23代表やKリーグの監督を歴任し、2017年に就任した。

ベトナム代表のパク・ハンソ監督
フィジカル改善など手腕を発揮したパク監督。国民からの支持は高い (source: en.vff.org.vn

 就任後すぐに着手したのが代表選手の意識改革だ。例えば、食事面。国民食のフォー(ライスヌードル)などベトナム料理はヘルシーなものが多く、国民も痩せ型が多い。だが、それでは世界と戦えない。

 パク監督は「朝食はフォーだけでなく、卵や牛乳などタンパク質もしっかり摂れ!」と選手に求めるなど、食事の重要性を説いた。さらには栄養学の専門家を招いて、講義を聞かせたという。フィジカル面の改善は、ベトナムサッカー急成長の大きな要因とされている。

by KEGEN PRESS編集部
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