海外サッカー

W杯出場は至上命令。サッカー中国代表「帰化選手」急増のワケ

エウケソン
「中国にルーツのない」代表初の帰化選手となったエウケソン(source: thecfa.cn

 6月に再開するワールドカップ2022カタール大会のアジア2次予選に向けて、サッカー男子の中国代表が「帰化選手」5人を招集した。「帰化戦略」は2019年ごろから進められ、代表招集が可能な選手は大幅に増えている。国家主導の「サッカー大国」計画が進められる中、ワールドカップ出場は至上命令。しかし、長い間代表チームは結果を残せていない。「長期策ではない」とする中国サッカー協会の選択は現状を打開できるのか。代表チームの現状や帰化選手の顔ぶれを伝える。

背景に国家主導の「サッカー大国」計画

 中国で海外出身の帰化選手が増えだしたのは2019年に入ってから。この年の秋に始まったワールドカップ(以下、W杯)カタール大会アジア2次予選をにらんでのことだろう。

 それまで外国籍選手の帰化には消極的だった中国。方針転換の背景には国家主導で推進する「サッカー中長期発展計画」の存在がある。
  
 計画は2016年に打ち立てられた。大のサッカー好きで知られる習近平国家主席の肝いりと言われ、2050年までに「サッカー大国」を目指す。具体的には、W杯の自国開催も見据え、国民レベルでのサッカーの普及と強化に取り組む。代表チームは世界トップレベルに押し上げるのが目標だ。

 そもそも中国では、サッカーは以前から国民の人気や関心が高いスポーツ。バスケットボール、バレーボールとともに「中国三大球技」と呼ばれる。国策がどうのこうのという前に、代表チームの強化は国民の悲願でもある。

 その代表チームの強化がなかなか進んでいないのが現状だ。

サッカー中国代表のマルチェロ・リッピ監督
名将リッピでさえ中国代表の強化は難しかった(source: the-afc.com

 国内リーグがプロ化したのは1994年。日本とほぼ同時期になる。近年の経済成長の恩恵を受けてプロリーグは活況を呈したが、代表チームが強くなったとは言いがたい。W杯では、ホスト国の日本と韓国が予選を免除された2002年のW杯日韓大会に初出場して以降、3大会連続でアジア予選敗退が続く。

 「サッカー大国」計画が始まった2016年には、2006年W杯ドイツ大会で母国イタリアを優勝へ導いた名将マルチェロ・リッピ氏を監督に招へいした。しかし、リッピ氏の力をもっても2018年W杯ロシア大会への出場はかなわかった。

 リッピ氏は2019年1月にAFCアジアカップのベスト8で敗退したことを受け辞任。後任として元イタリア代表のファビオ・カンナバーロ氏(現・広州FC監督)が引き継いだが、成績不振によりわずか1ヶ月半で辞任した。すると4ヶ月ぶりに再びリッピ氏が指揮を執るということに。結局、リッピ氏は同年11月のW杯アジア2次予選で、グループ首位通過を争うシリアに敗れ辞意を表明。会見で「高額な報酬をもらっている私がすべての責任を負う」と述べ、2度目の辞任となった…。

FIFA規約改正が追い風に。帰化選手5人を招集

 名将でも難しかった代表チームの強化。後がない状況で命運を託されたのが李鉄(リー・ティエ)氏だ。現役時代はイングランドのエバートンなどでプレー、2002年W杯日韓大会のメンバーでもある。原点回帰なのか。約3年ぶりの中国人監督として2020年1月から代表チームを率いている。

by KEGEN PRESS編集部
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