日本サッカー

天皇杯「ジャイアントキリング」の裏で「ドーハ世代」の長谷川、堀池が旧友対決!

2021年の天皇杯サッカー2回戦、FC東京対順天堂大学の試合

 「止める、蹴る」の基礎技術がしっかしていて、ミスが少ない。FC東京の選手が素早く寄せても、個人技でかわしてしまう。または寄せ切る前に、味方にパスを出してプレスの網をかいくぐっていく。なにより落ち着いていて、ちっとも焦らない。終始、堂々とプレーしていた。

 個人的には、FC東京の選手が順天堂大学のプレーに合わせすぎたように感じた。フィジカルコンタクトの場面でも、もっと「Jリーガーをなめんなよ!」ぐらいの勢いで激しくぶつかって、格の違いを見せつけるべきだった。

 ただ、やりにくい面はあったかもしれない。コロナ禍での試合のため、観客の応援は拍手のみ。静寂の中、選手たちがかけ合う声は「筒抜け」で聞こえた。Jリーガーとしてのプライドが邪魔をして、大学生にムキになる姿は見せまいと闘志を抑えすぎた選手がいた可能性はある。

 試合後、長谷川氏は「監督の責任」としながらも、「非常に悔しい。情けない負け。今日の試合で、選手はそれぞれ気持ちを出してくれたと信じたい」と語った。「気持ちを出してくれたと信じたい」という言い方に、選手への問いかけを感じたのは私だけだろうか。気持ちで戦う「ドーハ」世代の長谷川氏は腑に落ちなかったのでないか、と察する。ジャイアントキリングもさることながら、堀池氏との旧友対戦に破れた悔しさは相当なものだっただろう。

 大金星の堀池氏は「(この試合を)いちばん楽しみにしていたのは自分自身だろう。やるからには勝ちたい、という気持ちで臨んだ」と感慨深げに振り返った。

 2014年にJリーグ最優秀監督賞を受賞するなど、Jリーグ屈指の監督になった長谷川氏。一方、母校の順天堂大学で地道に指導者としてのキャリアを積み、同大准教授も務める堀池氏。Jリーグと大学サッカー。ステージは違えど、いくつになってもサッカーを通じて刺激し合える2人の関係性はすばらしい。

 ジャイアントキリング以外にも、楽しめた一戦だった。

(了)

by 北 コウタ
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