ボール使用は小5から!? ヘディング「脳に悪影響」でJFAが指導方針を発表
5月13日、日本サッカー協会(JFA)は育成年代のヘディングの指導法についてのガイドラインを発表した。ヘディングは子どもの脳に悪影響を与える可能性があるという。
2015年にアメリカサッカー協会が「10歳以下のヘディングの禁止」を発表したときは、日本でも話題なった。当時のアメリカでは脳しんとうが問題視されていた。メディアの取材を受けた三浦知良選手は、「4歳からヘディングしている僕はどうなるんですか?(脳が)揺れているんですか?」と冗談まじりに話した。三浦選手同様、日本での捉え方はみんなそんな感じだったはずだ。
だから、「日本でも本格的に議論されていたのか。いつのまに…」というのが今回の率直な感想だ。
背景にイングランド協会などの「若年代の練習禁止」
JFAは背景について、イングランドやスコットランドなどのサッカー協会が昨年2月に「若年代でのヘディングの禁止」と「ヘディングの段階的な導入」のガイドラインを策定したことをあげた。
イギリスでのこの動きは、2019年10月に発表されたグラスゴー大学の研究結果がきっかけになっている。
研究は1900年から1976年に生まれたスコットランドの元プロサッカー選手約7700人と一般人約23000人のうち、すでになくなった方の死因を比較。すると「元プロサッカー選手は神経変性疾患で死亡するリスクが一般人の3.5倍」であることが判明した。さらに一般人に比べ、アルツハイマー病のリスクは約5倍、パーキンソン病のリスクは約2倍、運動ニューロン疾患のリスクは約4倍だったという。
イングランドサッカー協会は「研究によって、ヘディングが神経変性疾患にリンクするという証拠が出たわけではない」としながらも、「潜在的なリスクを軽減するためにガイドラインを策定した」と説明した。
サッカーの母国が動いたので、日本でもガイドラインを策定したというわけだ。
JFAも同じく、「現時点でヘディングに関するリスクについて科学的な十分な根拠があるわけではない」としている。今後も研究報告をフォローし、ガイドラインは常にアップデートされるという。ちなみに国際サッカー連盟(FIFA)は「明確な結論を出すにはさらに研究が必要である」としている。
禁止はしない、ヘディングのリスクを「正しく恐れる」
JFAのガイドラインのモットーは、「禁止するのではなく、正しく恐れる」。適切な練習方法により、ヘディングの段階的な習得を目指すという。主な指導方針は次のとおりだ。
▼幼児期~小学2年生
風船や新聞を丸めたボールを使い、空間を移動するボールに身体を合わせる運動を経験させる。トレーニングではなく、遊び感覚を意識する。その過程で徐々に額に触れさせる(額に乗せるなど)。
▼小学3年生~4年生
キャッチボールなど空間にあるボールを手で扱う経験を十分に積ませる。4号球ではなく、軽量ボールを使って正しいヘディング技術の習得を行う。「額に当てる」「インパクトまでボールを見る」などの基本的な技術を理解させる。
▼小学5年生~6年生
引き続き、空中のボールを手で扱う練習を中心に行う(空中のボールを手で取り合うなど)。4号球を使っての練習は頭部への負担を考慮して徐々に行う。スタンディング、ジャンプなど種目ごとに週に1回10回程度。
▼中学生
頭部への負荷を考慮しながら、軽量ボールや4号球を使って正しいヘディング技術の習得ための反復を行う。相手との正当な競り合いができるような練習も積極的に導入する。体幹の安定、首回りの強化といった基礎体力強化も導入する。
サッカーボールを使ってのヘディングの練習は小学5年生になってから。それまでは風船や軽量ボールなどを使い、動作やインパクトなどの基本技術の習得や、ボールの落下地点をとえらえる感覚を身につけることに重きを置く。実践を想定した本格的な練習は中学生になってから。しかし5号球ではなく、4号球や軽量ボールを使う。