池田新監督で「なでしこ」は変わるのか。抜擢の決め手は「情熱的なチームビルディング」?
10月1日、女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)の新監督に池田太氏が就任した。7月30日に東京オリンピックのベスト8で敗退してから2ヶ月余り。選考に時間を要した印象だ。
就任会見に同席した日本サッカー協会(JFA)の今井純子・女子委員長は、「東京オリンピックの総括をずっとしていた」と説明。「新たにゼロベースでやるべきか、いままで継続してきたものを極めるべきか」について議論を重ねたという。ゼロからか、継続か。突っ込んだ話し合いがあったことは想像に難くない。高倉麻子前監督は5年間指揮を執ったが、世界王座の奪還はならなかった。
結論は「継続」。女子委員会は「目指してきた方向性自体は間違っていない」とし、「いままでの継続性を大事にしよう」と決めた。今井委員長によると、日本の強みである技術や連動性を“圧倒的な武器”になるまで高めることで一致。細部を詰め、共通理解を深め、選手をしっかりモチベートし、歯車が噛み合えば、「世界で戦っていける」と再確認したという。
要するに高倉体制を継承しつつ、テコ入れを図る。それを実行できる指導者を念頭に人選を進め、池田氏を選んだという。今井委員長は「日本の持つポテンシャルを信じ、日本サッカーの強みを最大限引き出せる監督」と期待を寄せた。
女子バスケの銀メダルを見て、「初の外国人監督」もありかと考えたが…
個人的には、このあたりで「なでしこジャパン初の外国人監督」もありなのではと考えた。「WEリーグ」のプロ化を機に、思い切った「改革路線」もいいと感じたからだ。
男子のサッカー日本代表は1998年のワールドカップ(W杯)フランス大会で惨敗し、「このままではいかん」となり、日本にゆかりのないフィリップ・トルシエ氏を招へいした。トルシエ氏は規律を重んじる日本人の良さを活かしながら、一方で日本人が苦手な自己主張を引き出す形で奮起を促し、一定の成果を収めた。
他競技だが、東京オリンピックの女子バスケットボール日本代表の成功例も印象的だった。ヘッドコーチのトム・ホーバス氏(当時)は、欧米に比べて平均身長が圧倒的に低い日本が勝つためには何が必要かを考えた。厳しい練習を課して走り負けないフィジカルを強化し、100通り以上の緻密な戦術を頭に叩き込ませた。また、選手全員がスリーポイントシュートを決められるよう求めた。その結果、どこからでも得点が取れるチームに成長し、史上最高の銀メダルを獲得した。
外国人監督は、日本人にはない視点と発想で弱点を洗い出し、改善策を打ち出す。また、日本社会のしがらみを感じずに独自の指導法を突き進む。文化の違いや言葉の問題で、ときに協会とすれ違うこともあるが、それも「経験」としてポジティブにとらえればいい。
だが、いまの日本の女子サッカーの雰囲気を考えると、大胆な改革にかじを切る気持ちの余裕はないかもしれない。2年後の2023年にはFIFA女子W杯、翌2024年にはパリ・オリンピックが控える。また、WEリーグ開幕で女子サッカーの人気向上が求められる時期だ。
外国人監督の起用は冒険的要素もあり、成果は未知数。今回、積極的な議論はなかったと推察する。
今井JFA女子委員長「高倉体制は共感も多かったが、違う刺激で継続を」
池田監督は1970年生まれの東京都出身。現在51歳だ。武南高校(埼玉県)、青山学院大学を経て、Jリーグが開幕した1993年に浦和レッドダイヤモンズに入団した。浦和レッズで1996年までプレーし、現役を引退。その後は、同クラブやアビスパ福岡のトップチームのコーチなどを経て、2017年にU-19女子日本代表監督に就任した。同年、AFC・U-19女子選手権で優勝すると、勢いそのまま翌2018年のFIFA・U-20女子W杯で日本を初優勝に導いた。
アンダー世代を率いて結果を残し、フル代表監督に就任したケースは高倉前監督と同じだ。2人の指導スタイルはどう違うのか。