どうなる? いまだ決まらないACLの試合放送。東地区開幕まであと1ヶ月
やばい…。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の放送予定がいまだ決まらない。東地区のグループステージ開幕まであと1ヶ月。ACLファンにとってはなんとも嘆かわしい状況が続いている。
以前、「日韓戦」についての記事でも書いたが、意地とプライドがぶつかりあう「魂の肉弾戦」が好きだ。だから、日韓、日中、中韓でガチンコ勝負が繰り広げられるACLもやっぱり大好物。正直、Jリーグの開幕以上に毎年楽しみにしている。
そんなACLの放送消滅の危機がささやかれていたことは知っていた。2013年から昨年までは日本テレビ系列のCSチャンネルで放送されていたが、その公式ウェブサイトに「『2021シーズン』の放送は現状予定しておりません」と告知されていたからだ。
薄々は感じていた。以前はJリーグ勢の試合が録画を含めてすべて見ることができた。しかし、ここ数年はCSチャンネルごとに分散されるようになり、有料契約を増やさないとすべては見られない。また生中継の試合数も徐々に減り、明らかにACL放送への「熱」が下がっているのがわかった。昨今、民放のサッカー番組の打ち切りが相次ぐ状況。仕方がないのかな、そう感じていた…。
だが、調べてみるとそこには裏の事情があったようだ。
問題の発端はAFCの放映権をめぐる裏事情
簡単に言うと、アジアサッカー連盟(AFC)の「放映権(中東地域を除いた全世界)を含む商業的権利」を代理で販売する業者(代理店)が今年から変わっていた。
1993年から昨年まではフランスの代理店ラガールデールが契約していたが、2021年から2028年までは中国(香港)とスイスの合弁企業「DDMCフォルティス」が請け負うことになった。
問題は、そのDDMCフォルティスが推定総額20億ドル(約2100億円)という超大型の8年契約をAFCと結んだことだった。入札において、ラガールデール、パフォームグループ(現在のDAZN)、そして日本の電通による3社連合は太刀打ちできなかったという。
DDMCフォルティスは、AFCの代理業務のために「FMA(Football Marketing Asia)」を立ち上げた。つまりACLの放映権についてはこのFMAとの交渉が必要なわけだが、巨額の契約金を積んだFMAが提示するマージンがどれほどになるのかは想像に難くないだろう。日本テレビは2020年の契約満了をもって更新はしなかった。
一方、AFCの放映権はなにもACLだけではない。ワールドカップ(W杯)のアジア予選やアジアカップも含まれている。「絶対に負けられない戦い」と題して、元日本代表の松木安太郎氏の「熱血解説」などでW杯予選を盛り上げてきたテレビ朝日もまた、2020年の契約満了に伴い撤退。AFCの映像が使用できないため、18年間続いた長寿番組『やべっちF.C. ~日本サッカー応援宣言~』が終了を余儀なくされたと言われる。
こうしたビジネスがらみの裏の事情を知ると、一サッカーファンとしてはちょっと寂しい。
JFAの根回し? AFCの配慮? 事態は動いた
「日本サッカー協会(JFA)よ、なんとかしてくれい!」
心の中で叫んでいたところ、事態は動いた。AFCが公式ウェブサイト上で「AFCは、日本での独占的販売のための商業契約を電通と結んだ」と発表した。今年の4月22日のことだ。
「ムムっ!」。川平慈英氏もうなったに違いない。
詳しく見ると、FMAとの契約内容から日本での代理業務が除外され、電通に譲渡されたという。そしてなぜか、AFCのダトー・ウィンザー・ジョン事務局長のコメントも添えられていた。
「日本は、アジアのみならず世界でも、男女ともにサッカーにおいて成功を収めている国の一つ。今回の契約は、日本の何百万人もの熱狂的なファンがAFCの世界クラスの大会にアクセスして参加するための道を開く。重要な合意だ」
JFAの根回しなのかはわからない。だが、水面下で何かしらの交渉があったと推察する。ACLの大会スポンサーにはニコン、トヨタ、コナミ、セイコーなど多くの日本企業が名を連ねる。日本で試合が放送されない事態をAFC側が回避したかったのでは、との見方もある。
いずれにせよ、あとは電通と日本の各放送局との交渉しだい。どこかが手を挙げてくれることを願うばかりだ。頼む! ただ、決まったところで自宅の視聴環境にマッチするかはわからないが…。
ACLが見られないサッカーライフなんて考えられない。朗報を信じて待つしかない!
(了)
※〈追記〉
6月18日、スポーツ・チャンネル「DAZN(ダゾーン)」は、2021年より8シーズンにわたり、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)の独占放映権を獲得したことを発表! 東地区のグループステージは全60試合を配信予定。
信じてよかった…(涙)。ありがとう、ダゾーン!