中国サッカーはいまが「分水嶺」。バブル終焉でJリーグを意識した改革へ
2021年に入り、中国サッカー界の動向が注目されている。
2月、中国のプロサッカーリーグ1部の前年王者・江蘇FC(元江蘇蘇寧FC)が活動停止を発表した。理由はオーナー企業の財政難による撤退だ。各国メディアは「中国サッカーバブルの終焉」と一斉に伝えた。一方、中国国営の新華社通信は「信じられないことだが(事態は)落ち着いてきた感じがある」と報じた。さらには「バブルが早期にはじけたことは良いことだ。中国のプロサッカーは高スピードの成長を経て最初の『分水嶺』をむかえている」といくぶん前向きに伝えた。
中国サッカー協会は昨年12月、2021年シーズンからの「サラリーキャップ制」の導入とクラブ名における「企業名の使用禁止」を決定した。いずれも地域密着を掲げる日本のJリーグがすでに実施している規定だ。近年、中国は日本サッカーの発展過程を考察し、手本にする姿勢を見せている。プロリーグの再構築が待ったなしの状況となったいま、Jリーグを意識した改革へとかじを切ったようだ。
“金満”経営に「コロナの逆風」。昨シーズンは16チームが消滅。
国家の経済成長を背景に中国のプロサッカーリーグはここ数年で急発展をとげた。「爆買い」と言われた世界一流選手の引き抜き、名将監督の招へい。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で上位に勝ち進むチームも増え、サッカーファンの盛り上がりもピークに達した。
2017年4月に、ホームの天津建権が上海上港(現・上海海港)を迎えた試合を現地で観戦したことがある。
天津建権からは元ブラジル代表FWのパトと現ベルギー代表MFのヴィツェルが、上海上港からは同じく元ブラジル代表のFWフッキとMFオスカルが出場し、世界トップクラスの4選手よる豪華“競演”を堪能した。さらに言えば、両チームのベンチには、天津側は元イタリア代表DFのカンナヴァーロが、上海側は名将、ビラス・ボアスが、それぞれ監督として座っていた。超満員のスタジアムには、中国のプロサッカーの成功を信じて疑わない熱狂サポーターたちが声を張り上げていた。
しかし、高騰する外国人選手の年俸やクラブオーナーの“金満”経営への懸念はつねにあった。「中国サッカーバブルはいつはじけるのか?」「成長は本物なのか?」。有名選手が中国移籍を決めるたびにささやかれた。
それもそのはずである。2016年から2017年にかけての冬の移籍市場において、中国のプロリーグ全クラブが投じた総額はなんと史上最高の3億8800万ユーロ(約505億円)に達していたのだ。
この状況を受けて、とうとう中国サッカー協会が動いた。