中高生のサッカー小僧たちよ! 木村和司、知ってる?― 「10番の極意」記した著書
この本が気に入ったのは、内容がすごくマニアックだったから。読者の想像力をかきたてる工夫があった。大まかな目次はこんな感じだ。
▼第1章…「背番号10」のプレーとは何か
▼第2章…理想の「背番号10」
▼第3章…スルーパス/「10番」のプレー実例
▼第4章…ゴール/「10番」のプレー実例
▼第5章…「背番号10」のスペシャル・テクニック
▼第6章…フリーキックとコーナーキック
目玉は、第3、4章の“「10番」のプレー実例”。当時としては「画期的」な、コンピュータグラフィックを駆使した“3Dイラスト”で、「木村和司の視点」を再現。そこに相手DFとの細かい駆け引きやプレー成功のポイントなども添えられ、イメージトレーニングがしやすかった。いまみたいにプレー動画がネットですぐに見られる時代ではなかったので、すごく斬新だった。木村氏らしいこだわりが感じられれ、印象に残った。
現代サッカーに比べて、木村氏が活躍した時代のサッカーは、時間にもスペースにも余裕があったかもしれない。しかし、アイデアや状況判断、プレー成功の秘訣など木村氏が示す10番の極意は、時代が変わっても十分参考になるし、学ぶべき価値があると思う。
原点は「ろくむし」! 子どものころの「遊び心」でサッカーを楽しむ
木村氏は、「ちゃぶる」(相手をおちょくる、翻弄するという意味)という造語をよく使ったことでも知られる。とにかく「遊び」の延長のようにサッカーを楽しみ、観客を喜ばせるプレーを心がけた選手だった。
本書によると、その原点はなんと!子どものころに仲間と遊んだ「ろくむし」(鬼たちが投げるボールをさけながら、2つの円の間を6往復する遊び)だという。ボールをぶつけるときにフェイントをいれたり、ボールをよけるときにジャンプをするふりをしてしゃがんだり、走って急に止まったりと、「相手を『だます』工夫を身につけた」という。
「ろくむし」と聞いて、懐かしい~!と思うオジサン世代は多いのではないだろうか。私も遊んだ経験があるが、「確かにサッカーに活かせる要素があるかも」と思った。
日本サッカーは強くなったが、最近は「遊び心」のある選手が少なくなったと言われる。時代の流れとともに「失われた良さ」もありそうだ。昭和のファンタジスタの原点が「ろくむし」だと知り、考えさせられた。
ちなみに、本書第2章の〈理想の「背番号10」〉では、ペレやジーコ、マラドーナらとともにラモス瑠偉氏の名前もあげている。
その理由について木村氏は「ラモスを好きなのはプレーに『遊び心』があるからだ。重要な試合でも、ミニゲームのようなプレーを見せてくれる」とつづる。
中高生のサッカー小僧たちにも、 木村和司を知ってほしい!
(了)