日本サッカー

つまずいた若者には「アニキ」が必要なのか? 長友佑都の代表復帰と「Z世代」

 1月のアジアカップ招集メンバーを見ると、最年長は32歳の谷口彰悟。次に31歳の遠藤航と伊東純也が続く(いずれも現年齢)。彼らの代表チームでのふるまいはどんな感じなのか。詳しくは知らないが、川島らに比べれば“アニキ度”は低く、タイプも違うと感じる。

 2023年のフル代表は戦績が良すぎて「アニキ」不在も気にならなかった。だが、アジアカップを通じて欠点が浮き彫りに。想定外の事態にもろく、つまずくとなかなか熱量が上がらないことがわかった。

 すべての発端は初戦のベトナム戦だと考える。格下にリードを許すまさかの展開でくらった精神的ダメージが大きく、「あれ?なんか違うぞ」の不安が最後まで後を引いた。あのとき、頼れる「アニキ」がいたら。状況はまた違ったかもしれない。

 ちなみに、川島永嗣=1983(昭和58)年生まれ。長友佑都=1986(昭和61)生まれ。吉田麻也=1988(昭和63)年生まれ。思えば、フル代表最後の昭和世代だった。

令和時代は「リトル・アニキ」? 松木玖生の代表入りに期待

 昭和の感覚を持つ森保氏が代表監督を続ける限り、メンタルや熱量の懸念はすぐに消えそうにない。

 とはいえ、Z世代が中心のフル代表になったいま、選手へのアプローチや指導方法は変化が必要な時期に来ているとも言える。時代や社会の変化を敏感にとらえ、常にアップデートする必要があるだろう。言葉より文字を好んでコミュニケーションを取る世代だ。

 一方、Z世代の中に「アニキ肌」の選手がいないわけではない。

 長友と同じFC東京所属の松木玖生(くりゅう)はその代表格だ。強豪の青森山田高校で1年時からレギュラーをはり、3年時に3冠達成。高卒ルーキーでJリーグ開幕スタメン入りすると、プロ3年目の今季は主将に抜擢。若干21歳で腕章をまく。

 松木が世間で注目されたのは高校2年時の練習映像がきっかけだ。覇気のないチームメイトを集合させ、先輩だろうが容赦なく喝を入れた。その様子がテレビで流れ、サッカー界を問わず話題になった。

 言うだけではなく、松木は誰よりも走る。苦しいときこそ背中で引っ張る。“男もホレれる”アニキ肌タイプなのだが、実はFC東京入団を決断した理由は、長友の存在が大きかったことを明かしている。

FC東京の松木玖生
21歳にして「闘将」の風格ただよう松木。飛び級招集のU-23日本代表でも不可欠な存在だ(source: getty images)

 そんな松木を筆頭に、最近のJリーグは若くして主将を任される選手が増えていると感じるのは私だけか。

 昭和世代は、主将は経験豊富な年長者がやるものと考えがちだが、これも「多様性」を重んじる時代の風潮か。適任と見なせば、松木のような「リトル・アニキ」でもチームの精神的支柱にすえる。

 松木のフル代表入りに期待している。後輩に喝を入れられた先輩が熱量を上げないわけにはいかないからだ。どんな「化学反応」が起きるのか。森保監督には早く試してほしい。

 日本人の特性として、集団スポーツにおける「アニキ」の存在が効果的なら、その必要性はなくならないだろう。だが、令和に入り年功序列は「時代遅れ」だと叫ばれている。

 となると、これからは年齢に関係なく、熱量のある選手がその役割を担うのか。けん引役の「リトル・アニキ」も珍しくない、そんな時代に変わっていくのかもしれない。

(了)

by 北 コウタ
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